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【ぶんか】陶磁器以外の伝統的工芸品~窯業製品「ガラス」と「瓦」~

【ぶんか】陶磁器以外の伝統的工芸品~窯業製品「ガラス」と「瓦」~

【ぶんか】陶磁器以外の伝統的工芸品~窯業製品「ガラス」と「瓦」~

窯業製品とは

土や石を材料にして「窯」で焼いて作るものを「窯業製品」といいます。

窯業製品では陶磁器がいちばん代表的です。
しかし、実は

  • ガラス

の他に、

  • 煉瓦
  • 「セメント」

も窯業製品です。

この内、伝統工芸品に指定されている

  • 「ガラス」
  • 「瓦」

について説明します。

ガラスについて

▼ 切子の花瓶

ガラスの歴史

世界のガラスの歴史

ガラスがいつから作られ始めたのかははっきりとはわかりません。
しかし、四大文明のひとつメソポタミアで、4500年頃から作られ始めたと考えられています。

日本のガラスの歴史

日本でも2000年前くらいの遺跡から、小さなガラスやビーズが見つかりました。
2000年前のガラスでつくられた製品は、おそらく中国大陸からの輸入品です。

200年頃の遺跡からは、ガラス炉の跡と思われるものが見つかっています。

美術品としての「切子」

5世紀頃からササン朝ペルシアで、ガラスのカット方法が発明されました。
表面に円の模様に切った、特色のあるグラスが作られ始めました。

東大寺正倉院にある「白瑠璃椀」

白瑠璃椀は、グラスの口が120mm、高さが85mmあります。
円形や亀の甲羅の模様(亀甲模様)がついた切子の椀です。

このグラスに関して正倉院に記録が残っていません。
そのためこの椀がいつ日本に来たのかはわかりません。
この椀と材料や形がそっくりの「円形切子椀」が東京の国立博物館にあります。

この椀は1950年に大阪の人の家から見つかりました。
そこは536年に亡くなった第27代安閑天皇の墓だったといわれています。

この2つの椀は、6世紀のはじめにササン朝ペルシアで作られたものだと考えられています。

この椀は完成後、かなり早い時期からシルクロードを通って、日本に伝わったと言われています。

伝統的工芸品としての「江戸切子」

江戸切子は1834年に江戸の町の加賀屋久兵衛というガラス屋がはじめました。
江戸切子は、ガラスの表面に彫刻で模様をつけたことが始まりと言われています。

それほどお金を持っていないガラス屋だったため、透明なガラスへ細工をすることが主流でした。
切子の模様も、着物にもよくある菊や麻の葉の和風模様が中心でした。

(菊の柄)
(麻の葉模様)

「薩摩切子」

薩摩切子は「江戸切子」から生まれました。
「江戸切子」を越えたともいわれています。

1846年に島津藩主が加賀屋久兵衛の弟子のガラス職人をスカウトしました。
そして切子をつくりはじめました。

当時、薩摩藩は日本でも有数のお金持ちの藩でした。
そのため薩摩切子を日本の特産品にしようと、思い切った投資をしました。
結果、ガラスに様々な色(紅・藍・紫・緑など)をつけることに成功しました。

▼ 様々な色の切子

しかしこの薩摩切子は、薩摩藩主の死亡や工場の火災などにより、30年ほどで衰退してしまいました。
この薩摩切子が作られなくなったときに、江戸切子も薩摩切子の影響を受けました。
そして、様々な色の切子が人気になりました。

薩摩切子はいちど途絶えてしまいました。
1986年にまた作られはじめましたが、伝統的工芸品には指定されていません。

「瓦」について

瓦の歴史

瓦の歴史はたくさんあります。
しかし中国では紀元前900年~800年ごろに屋根に瓦を使っていました。

日本では588年頃に朝鮮半島から4名の瓦を作る技術者が来ました。
お寺の屋根の瓦づくりを始めました。

日本三大瓦

7世紀ごろから奈良をはじめとして全国各地で瓦が作られました。
そして17世紀ごろから、特に3つの地域が有力な産地になりました。

それぞれの旧国名をつけた三つの瓦が三大瓦とばれています。
その三つは

  • 「三州瓦(三河国、現在の愛知県東部)」
  • 「淡路瓦(淡路国、現在の兵庫県淡路島)」
  • 「石州瓦(石見国、現在の島根県西部)」

です。

三州瓦

三州瓦といえば、昔は「いぶし瓦」と呼ばれる銀白色の瓦が中心でした。
現在は「赤瓦」と呼ばれる赤い色が少しついた瓦や釉薬がある瓦も作られています。

屋根の飾りに使われる「鬼瓦」だけが「三州鬼瓦工芸品」として伝統的工芸品に指定されています。

淡路瓦

淡路国(いまの兵庫県淡路島)では、「淡路のいぶし瓦」といわれるくらい、「いぶし瓦」が有名です。
いぶし瓦は光が当たると白っぽい、薄い灰色をしています。
この灰色は、日本の瓦として多くの日本人が思い浮かべる色です。

いぶし瓦は1000度程度という比較的低い温度で焼かれます。
そのため、瓦に水が浸み込みやすいです。
このため「いぶし瓦」は関西地区で雪の降らない地域でよく使われています。

石州瓦

石州瓦は赤い瓦としてよく知られています。
日本では冬に気温が下がって、瓦が割れてしまうことがあります。
しかし、三州瓦や淡路瓦は冬の寒さにも強いです。

石見国では冬に雪が積もります。
そのため、ここで作られる石州瓦は1200度以上の高温で焼いてつくります。
これによって瓦は水を吸いにくく、気温が下がっても割れにくいです。

このため石州瓦は、寒くて雪の多い山陰の沿岸地区や山の近くで人気です。
この瓦は寒さにとても強いので、北陸や東北、北海道からの注文があります。
ロシアからも注文が来ることがあります。

参考:伝統的工芸品 (METI/経済産業省)
文章・画像提供:gmaru様

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